基本動詞バンクは、日本語の基本動詞の用法を体系的に整理したオンライン辞書です。日本語の基本動詞を正しく使いたい学習者や、「始まる―始める」「入る―入れる」のような対になる動詞を正しく使い分けたい学習者を対象としています。また、日本語教師が授業での提示や学習者指導の補助として活用することも想定しています。

日本語の対になる動詞は、形態のパターンが多くて覚える負担が大きいだけでなく、その使い分けが格助詞(特に「が」と「を」)の選択にも関係しているため、学習者にとって最も習得が難しい項目の一つです。例えば、「始まる―始める」では以下のような誤りがよく見られます。

冬休みすぐ始めます
授業ははじまるときいつも「みなさんおはようございます。では、はじまりましょう」と言います。(寺村誤用例集データベース)

習得が難しい他の理由としては、教科書でこれらをペアとして同時に学習する機会が少ないことや、対になる動詞を語義レベルで見ると、ペアの間で対応している語義と対応していない語義があることなどが挙げられます。

基本動詞バンクでは、基本動詞や対になる動詞が使いこなせるようになるための4つの機能を提供しています。これらの機能は画面上のメニューで切り替えることができます。

動詞見出し

一般的な辞書と同様に、五十音から動詞を調べることができます。各見出しでは、語義ごとにその動詞がどのような「動詞格配列」(ガ格、ヲ格、ニ格などの組み合わせ)で使われるのかを示しています。語義ごとの適切な組み合わせを知ることで、正しい格助詞と組み合わせて動詞を使えるようになります。

動詞格配列

「動詞がいくつの格を必須としているか」、さらに、「その必須の格の組み合わせは何か」という2つの条件から、該当する動詞の語義と用例を調べることができます。例えば、「2つの格を必須とする動詞」から「ガ格とヲ格をとる動詞」という条件で検索することが可能です。

動詞対比較

対になる動詞の語義には、対応している語義と、対応していない語義(片方の動詞にしかない語義)があります。「動詞対比較」では、対応している語義を左右に並べて表示します。また、どの語義が対応していないのか確認できます。例えば、「当たる―当てる」の場合、「当たる」の「ものとものがぶつかる」という語義は、「当てる」の「ものを他のものに勢いよくぶつける」という語義と対応しています。しかし、「当たる」の「雨や風、光や熱が体に影響する」という語義に対応する「当てる」の語義はありません。「動詞対比較」では、このような語義の対応関係が視覚的に分かるようになっています。

動詞対分類

動詞対を動詞の活用の種類(グループ1とグループ2)の組み合わせによって4つに分類し、この4分類に基づいて、形の上での動詞対を振り分けています。この分類にしたがって動詞対を覚えていくと、動詞対の形態的な関係と活用の種類を同時に学ぶことができます。詳しくは次のセクション「動詞対の分類」をご覧ください。

動詞対の分類

日本語には、「開く-開ける」、「割れる-割る」のように形や意味が関連する動詞対が数多くあります。「開く」や「割れる」は非使役動詞で、「開ける」や「割る」は使役動詞です。非使役動詞は、「ドアが開く」のように自然にそうなる状態を表し、使役動詞は、「~がドアを開ける」のように誰かが働きかけてそうさせる状態を表します。非使役動詞には自動詞と他動詞がありますが、使役動詞は他動詞のみです。

動詞対を動詞の活用の観点から見ると、「開く」は「開きます、開かない」のように活用し、グル-プ1の動詞です。これに対して、「開ける」は「開けます、開けない」のように活用し、グル-プ2の動詞です。また、「花瓶が割れた」と「~が花瓶を割った」のような場合では、非使役動詞の「割れる」は「割れない、割れます」のように活用するグル-プ2の動詞で、使役動詞の「割る」は「割らない、割ります」のように活用するグル-プ1の動詞です。つまり、「開く-開ける」の場合は、グル-プ1とグル-プ2の組み合わせになりますが、「割れる-割る」の場合は、グル-プ2とグル-プ1のように逆の組み合わせになります。

また、日本語の動詞対を形の上での関係から見ると、形の変化には一定のル-ルがあり、十数種類のパタ-ンに分けることができます。そして、それぞれのパタ-ンは、必ず特定の動詞の活用の種類(グル-プ1とグル-プ2)の組み合わせになることが分かっています。例えば、「開く-開ける」と同じ変化のル-ルになる「続く-続ける」、「進む-進める」などは、非使役動詞がグル-プ1、使役動詞がグル-プ2の組み合わせになります。また、「割れる-割る」と同じ変化のル-ルになる「売れる-売る」、「切れる-切る」などは、非使役動詞がグル-プ2、使役動詞がグル-プ1の組み合わせになります。なお、グル-プ3に属する「来る」や「する」などの動詞は対になる動詞をもたないので、ここでは対象外とします。

つまり、動詞対の活用の種類と形の上での関係には深い結びつきがあり、これらを合わせて理解することが、動詞対を最も効率よくマスタ-する近道になります。それでは、形の変化のル-ルとは一体何なのか、動詞の活用が決まる仕組みは何なのか、動詞の内部のパ-ツを具体的に見ながら明らかにしましょう。

動詞対の形の変化の「ル-ル」とは?

対になる動詞は、「共通の部分」と「異なる部分」に分けることができます。2つの部分は動詞対をロ-マ字表記にすると分かります。例えば、「開く-開ける」の場合、それぞれのロ-マ字表記は aku と akeru になり、共通の部分は ak になります。次に「異なる部分」ですが、「ペアの違いを作る部分」と「終わりの部分」の2つに分けることができます。

「開く-開ける」は、次のような3つの部分からできています。なお、専門用語では、「共通の部分」を語根(ごこん)、「ペアの違いを作る部分」を派生接辞(はせいせつじ)、「終わりの部分」を活用語尾(かつようごび)と呼びます。

開く(あく):ak[共通の部分]+ φ[ペアの違いを作る部分]+ u[終わりの部分]
開ける(あける):ak[共通の部分]+ e[ペアの違いを作る部分]+ ru[終わりの部分]
「φ」は何もないことを表す記号です。

「開く-開ける」と形の変化のル-ルが同じ動詞対に「続く-続ける」についても見てみましょう。

続く(つづく):tsuzuk[共通の部分]+ φ[ペアの違いを作る部分]+ u[終わりの部分]
続ける(つづける):tsuzuk[共通の部分]+ e[ペアの違いを作る部分]+ ru[終わりの部分]

この2つの動詞対の「ペアの違いを作る部分(派生接辞)」に着目すると、 φとeになり、「-φ-/-e-」 のように表すことができます。「-φ-/-e-」のル-ルで変化する動詞対には、このほか「進む-進める」「揃う-揃える」「沈む-沈める」などがあります。このような形の変化のル-ルは全部で十数種類ありますが、他のル-ルについては、動詞対の分類表のところで説明します。

動詞のグル-プ(活用の種類)が決まる仕組み

動詞を3つのパ-ツに分けたうちの「共通の部分」と「ペアの違いを作る部分」を合わせたものを「語幹(ごかん)」と言います。「開く」と「開ける」の場合、語幹はそれぞれakとakeになります。

開く(あく):ak[語幹]+u[活用語尾]
開ける(あける):ake[語幹]+ru[活用語尾]

語幹の最後の文字が子音(k, s, t, m, rなど)になるか、母音(a, i, u, e, o)になるかによって、その動詞がグル-プ1とグル-プ2のどちらの活用の種類になるかが決まります。

子音で終わる動詞はグル-プ1(五段動詞)
「開く」の語幹 ak や「続く」の tsuzuk のように、語幹の最後が子音で終わるものを子音語幹といいます。子音語幹の動詞はすべてグル-プ1の活用になります。
母音で終わる動詞はグル-プ2(一段動詞)
「開ける」の語幹 ake や「続ける」の tsuzuke のように、語幹の最後が「e」や「i」などの母音で終わるものを母音語幹といい、母音語幹の動詞はすべてグル-プ2の活用になります。
動詞対の分類表

ここまでの背景知識をもとに、[動詞対分類]のペ-ジにある動詞対の分類表を詳しく説明しましょう。最初に、動詞対の活用の種類を次の4パタ-ンに分類します。動詞対の前にくる動詞は非使役動詞、後ろにくる動詞は使役動詞です。

活用の種類(非使役動詞 / 使役動詞)
タイプ1 グル-プ1 / グル-プ2 [開く-開ける]タイプ、[下がる-下げる]タイプ、[似る-似せる]タイプ、[温もる-温める]タイプ
タイプ2 グル-プ2 / グル-プ1 [割れる-割る]タイプ、[流れる-流す]タイプ、[足りる-足す]タイプ、[燃える-燃やす]タイプ、[生きる-生かす]タイプ、[落ちる-落とす]タイプ、[甘える-甘やかす]タイプ
タイプ3 グル-プ1 / グル-プ1 [刺さる-刺す]タイプ、[返る-返す]タイプ、[動く-動かす]タイプ、[及ぶ-及ぼす]タイプ
タイプ4 グル-プ2 / グル-プ2 [分かれる-分ける]タイプ

次にこの4つのタイプに該当する動詞対の形の変化のパタ-ンを当てはめていきます。例えば、タイプ1には以下の4つの形の変化パタ-ンがあります。このタイプでは、非使役動詞がグル-プ1、使役動詞がグル-プ2になります。タイプ1aとタイプ1bの動詞対は多数ありますが、タイプ1cとタイプ1dは数が限られます。

タイプ1 グル-プ1 / グル-プ2
タイプ1a [開く-開ける]タイプ -φ-/-e- 進む-進める,立つ-立てる,続く-続ける,など
タイプ1b [下がる-下げる]タイプ -ar-/-e- 当たる-当てる,集まる-集める,決まる-決める,など
タイプ1c [似る-似せる]タイプ -φ-/-se- 浴びる-浴びせる,着る-着せる,など
タイプ1d [温もる-温める]タイプ -or-/-e- 籠もる-籠める,など

次にタイプ2を見てみます。タイプ2は形の変化パタ-ンが最も多く、7つのパタ-ンがあります。タイプ1とは逆に、非使役動詞がグル-プ2、使役動詞がグル-プ1になります。タイプ2aになる動詞対は多数あります。

タイプ2 グル-プ2 / グル-プ1
タイプ2a [割れる-割る]タイプ -e-/-φ- 売れる-売る,切れる-切る,取れる-取る,など
タイプ2b [流れる-流す]タイプ -re-/-s- 隠れる-隠す,倒れる-倒す,汚れる-汚す,など
タイプ2c [足りる-足す]タイプ -ri-/-s- 借りる-貸す,など
タイプ2d [燃える-燃やす]タイプ -e-/-as- 冷める-冷ます,逃げる-逃がす,濡れる-濡らす,など
タイプ2e [生きる-生かす]タイプ -i-/-as- 満ちる-満たす,伸びる-伸ばす,など
タイプ2f [落ちる-落とす]タイプ -i-/-os- 下りる-下ろす,過ぎる-過ごす,など
タイプ2g [甘える-甘やかす]タイプ -e-/-akas- はぐれる-はぐらかす,など

次にタイプ3です。タイプ3には4つのパタ-ンがあります。非使役動詞も使役動詞もグル-プ1になります。

タイプ3 グル-プ1 / グル-プ1
タイプ3a [刺さる-刺す]タイプ -ar-/-φ- つながる-つなぐ,はさまる-はさむ,など
タイプ3b [返る-返す]タイプ -r-/-s- 通る-通す,残る-残す,戻る-戻す,など
タイプ3c [動く-動かす]タイプ -φ-/-as- 驚く-驚かす,凍る-凍らす,済む-済ます,など
タイプ3d [及ぶ-及ぼす]タイプ -φ-/-os- 滅ぶ-滅ぼす,など

最後にタイプ4です。タイプ4のパタ-ンは1つで、非使役動詞も使役動詞もグル-プ2になります。同じ4aタイプになる動詞対はほとんどありません。

タイプ4 グル-プ2 / グル-プ2
タイプ4a [分かれる-分ける]タイプ -are-/-e-

あと、上記の形の変化のル-ルに該当しない動詞対もあります。

消える-消す,積もる-積む,なくなる-なくす,混じる-混ぜる,など

なお、形態上の動詞対の分類はJacobsen(1992)のAppendixを参考にしています。

使用データ

このサイトは、国語研リポジトリにある以下のデータを使用して制作しています。

日本語基本動詞データベース(バージョン2026.02)

日本語格助詞データベース(バージョン2026.04)

メンバー

日本語基本動詞データベースと日本語格助詞データベースの制作にかかわったメンバーです。

■ 日本語基本動詞データベース
監修
  • 砂川有里子 SUNAKAWA Yuriko
校閲
  • 尾沼玄也 ONUMA Genya
  • 関かおる SEKI Kaoru
  • マダドナーめぐみ MADERDONNER Megumi
執筆
  • 片山奈緒美 KATAYAMA Naomi
  • 古島友也 FURUSHIMA Tomoya
  • 飯田朋子 IIDA Tomoko
  • 日暮康晴 HIGURE Yasuharu
  • 猿橋亜希 SARUHASHI Aki
  • プレル大石まりい PROELL-OISHI Marii
  • 玉置充子 TAMAKI Mitsuko
  • 梅津聖子 UMEZU Seiko
■ 日本語格助詞データベース
理論研究班
  • 岸本 秀樹 KISHIMOTO Hideki 共同研究者・格助詞意味役割方式策定・アノテーション監修
  • 大島 デイヴィッド 義和 OSHIMA David Yoshikazu 共同研究者
  • 堀内 仁 HORIUCHI Hitoshi 共同研究者
  • 眞野 美穂 MANO Miho 共同研究者
  • 江口 清子 EGUCHI Kiyoko 共同研究者
  • 砂川 有里子 SUNAKAWA Yuriko 共同研究者・基本動詞班監修
  • 石川さくら ISHIKAWA Sakura 共同研究者
  • 田村 直子 TAMURA Naoko 共同研究者
  • 長崎 郁 NAGASAKI Iku 共同研究者
  • 沼田 善子 NUMATA Yoshiko 共同研究者
  • アヌブティ・チャウハン CHAUHAN Anubhuti 共同研究者
  • 松本 曜 MATSUMOTO Yo 共同研究者
  • 籾山 洋介 MOMIYAMA Yousuke 共同研究者
格助詞意味役割アノテーション班
  • 岸本 秀樹 KISHIMOTO Hideki 格助詞意味役割方式策定・アノテーション監修
  • 安下 尚吾 YASUSHITA Shogo アノテーター
  • 嘉藤 優太 KATO Yuta アノテーター
  • 原賀 明花璃 HARAGA Akari アノテーター
  • 上橋 秀太 UEHASHI Shuta アノテーター
  • 石川 さくら ISHIKAWA Sakura アノテーター
  • 林 佑実 HAYASHI Yumi アノテーター
  • 齋藤 諒弥 SAITO Ryoya アノテーター
  • 田中 誠士 TANAKA Seiji アノテーター
  • 吉川 史緒 YOSHIKAWA Fumio アノテーター
  • 土井 美琴 DOI Mikoto アノテーター
  • 寺田 友子 TERADA Tomoko モデル文作成者

謝辞

このインターフェースの作成には下記のプロジェクトの支援を受けました。

科学研究費補助金基盤研究(B)「学習者のニーズを反映した大規模な動詞用法データベースとオンライン教材の開発と公開」(23K21944)

参考文献

Jacobsen, Wesley M.The Transitive Structure of Events in Japanese. Kurosio Publishers, 1992.

Matsumoto, Yo. "Appendix A: List of Core Transitivity Pairs in Japanese (by Yo Matsumoto, a Revision of Jacobsen (1992))." Transitivity and Valency Alternations: Studies on Japanese and Beyond, edited by Taro Kageyama and Wesley M. Jacobsen, De Gruyter Mouton, 2016, pp. 479-88. https://doi.org/10.1515/9783110477153-017

お問い合わせ

以下のメールアドレスまでお問い合わせください。

prashantninjal.ac.jp

更新履歴

2026.08.01 バージョン 1.00 一般公開